海外から見た日本の社会インパクト投資

日本では2015年にソーシャルインパクトボンドのパイロット事業がスタートし、2018年度より休眠預金活用法が施行され、2018年度の社会的インパクト投資の市場規模が3,400億円をこえる(※1)など、投資利益と社会課題解決の両立を目指す社会的インパクト投資が広まりつつあります。

今回は、Stanford Social Innovation Reviewに掲載された「海外から見た日本の社会的インパクト投資」の記事を取り上げます。
記事内では、鎌倉投信と社会的投資推進財団の2機関の事例が取り上げられています。
https://ssir.org/articles/entry/social_investment_funds_with_a_conscience

※1  http://www.siif.or.jp/wp-content/uploads/2019/04/G8-Impact_Investment_2018-2.pdf

社会的インパクト投資の拡大

日本における社会インパクト投資額は2016年の337億円、2017年の718億円を経て、2018年には3,440億円と成長を続けています。(※1)
内閣府主導の休眠預金活用、ソーシャルインパクトボンド拡大など社会インパクト投資市場の形成が要因と考えられます。

そのような動向の以前の2008年から、鎌倉投信は人材・循環型社会・企業文化を重視する投資信託「結い2101」を運用しています。
現在は19,000名以上の投資家から386億円を調達・運用し、社会的インパクトと経済的リターンを提供しています。

鎌倉投信の役割:同じ志の企業をつなぐ

鎌倉投信の役割は、実績のある老舗企業や通常の投資家に注目されにくいソーシャルベンチャーへの投資を行うことだけではありません。
社会課題解決に取り組む投資先企業同士をマッチングさせて、一緒に社会課題解決に取り組むエコシステムを作り出す機能も有しています。

2018年には漢方薬メーカー最大手の株式会社ツムラが、耕作放棄地の活用を進める株式会社マイファームに3億円の出資を行いました。
両企業とも鎌倉投信の投資先であり、企業文化や社会課題解決への想いで共通点を持っていました。
自己資本301億円のツムラと1.7億円のマイファームは、企業規模は大幅に異なります。
しかし、地産地消の漢方薬の拡大と、地域で生産的な農業モデル構築を目指すマイファームの思惑が一致し、互いのノウハウやネットワークの共有とツムラによる資本提供が実現しました。

投資先企業同士の協働を進めるために、鎌倉投信では投資先のIR担当者を対象にしたワークショップを開いているそうです。

社会的インパクト投資とソーシャルインパクトボンドの広がり

記事内では、社会的投資推進財団が持続可能な発展を促進する機関として取り上げられています。
同財団は特にソーシャルインパクトボンドの組成に注力しており、神戸市で糖尿病治療事業で3,000万円、八王子市でがん検診促進事業で900万円規模の案件を実現し、民間投資を呼びこんでいます。

また同財団は、京都市にあるプラスソーシャルインベストメント株式会社に3,000万円を出資し、地域での社会インパクト投資促進を進めています。
日本の家計資産のうち約半分の0.9兆円が預貯金されている現状や、地方銀行が存在意義を問われている現状がある中、地域経済への関わり方の新しい形の提案につながっています。

社会的インパクトをどう測るか

社会的インパクト投資は、日本では比較的新しい概念です。
このスキームを広めるためには、投資によって社会課題解決につながることの証明が必要であり、そのために社会インパクト評価の手法の確立が必要とされています。

政府による促進や民間投資家の注目もあり、社会的インパクト投資が盛り上がっているものの、投資を受ける社会的企業の理解が進んでいない現状があります。
鎌倉投資や社会的投資推進財団のような中間的な組織が社会的企業側のインパクト投資への理解を促進し、需要を掘り起こすことが今後求められているそうです。

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