中国のフィランソロピーとブロックチェーン技術の活用

経済成長が著しい中国では、テック企業の成長だけでなく社会課題解決やフィランソロピーの成長も近年急激にみられています。

中国の企業主導の社会課題解決・フィランソロピーの概況と、ブロックチェーンが可能にする未来について、SSIRの記事をまとめました。
https://ssir.org/articles/entry/chinas_new_model_of_blockchain_driven_philanthropy

中国のフィランソロピーの現状

現在中国には80万以上の市民団体が届け出ており、未申請の草の根団体を含むとその数は150万以上といわれています。
市民団体は2011年から倍増しており、寄付者数は世界で第3位、ボランティアに登録した人は5,000万人をこえているそうです。
(日本の登録NPOは約5万団体)

これらの法人への寄付は主に富裕層と企業から行われており、年間の寄付額は2.3兆円以上(GDP比1.8%)のうち64%が企業から、23%が個人から行われています。
中国では寄付額上位100名の寄付者が3900億円以上の寄付を占めています。

フィランソロピーの法制度

中国では1988年に基金管理弁法が施行され、資金を集めて社会的な公共事業を行う民間組織が法制化され、2004年には社会的企業という概念の登場、NPO全般の役割を強化する法改正が行われました。

さらに2016年には、同国初の寄付に関する法律が採択され、寄付金の控除やNPOによる寄付集めの規制緩和が進む予定です。
(従来は政府の管理下のNPOしか幅広い市民からの寄付集めを行えませんでした。)

この法律の恩恵を受ける形で、アリババやテンセントが保有する非営利組織が、AlipayやWeChatなどを使ってオンラインで寄付集めを行えるようになるなど、その影響は大きいです。
すでにテンセントが2018年に開催したチャリティーイベントでは、3日間で130億円以上の寄付が多数のNPOに集まりました。

成長の影にある課題

法的規制の緩和やテックジャイアントの進出など、NPO・非営利組織・社会課題解決分野の見通しは明るく見えます。
しかし、大きな課題となっているのが透明性です。

財団の透明性に関する国際的な調査では、中国の財団4,960法人の透明性に関する平均評価は「満足ではない」とされています。
また、違法カジノ経営で逮捕された企業家が中国赤十字に多額の寄付を行っていたようなスキャンダルもあり、透明性のイメージも悪いようです。

特に小規模な組織や草の根組織がこのような課題に直面しています。

ブロックチェーンの活用による解決

このような問題の解決に対してブロックチェーンを使う取り組みはすでに始まっています。
アリババのグループ企業であるアリペイのプラットフォームを使って、聴覚障害児を支援する団体は50,000人以上から300万円以上の寄付を集めることに成功しています。
スキャンダルの影響に苦しんだ中国赤十字社も、SNSの活用、広報の強化、財務透明性の発信に加えてブロックチェーンを用いたアリペイのシステムを使うことで、信用回復に努めました。

いずれの例でも、ブロックチェーンを用いることで自分の寄付が何に使われているか追跡できる、寄付先団体のお金の取引がすべて把握できることが特徴です。
2017年には、アリペイのプラットフォーム上でブロックチェーンを用いたプログラムがすでに799件実施されており、中国のフィランソロピーにおける透明性への注目度を示しています。

ブロックチェーン活用の派生

非営利団体の寄付集め以外にも、個人が寄付を集められるクラウドファンディングでもブロックチェーンの活用が進んでいます。
個人の医療費寄付クラウドファンディングプラットフォームでも活用が進んでたり、都市部以外のプロジェクトの資金調達にも用いられるなどの広がりを見せています。

また、このようなプラットフォームのオープンソース化も進んでおり、小規模な団体が自分たちのブロックチェーンの寄付プラットフォームを持つこともできるようになっています。
その分各団体が、寄付を届ける先の個人の身分証明を行う必要も生じています。

今後の課題

ヘルスケアや貧困の解決など、個人の生活に介入するプログラムへ使われる資金を、透明性を担保したうえで調達することが、ブロックチェーンによって技術的に可能になりました。
ブロックチェーンの有効活用が模索されている中、中国のフィランソロピーでの活用はとても先進的です。

中国でブロックチェーン活用が進む背景として、テックジャイアントの存在、中央政府不信、電子取引・キャッシュレス決済の普及も背景としてありそうです。
また、ヘルスケアや貧困など生活課題を抱える個人が受益するプログラムでは、特にセンシティブな個人情報の扱いも生じるため、管理も課題になってくるでしょう。
今後中国以外への広がりも注目されます。

中国のフィランソロピー法制度の論文↓(pdf)
https://doors.doshisha.ac.jp/duar/repository/ir/22869/019017020004.pdf

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